アメリカ不動産市場のトピックと投資戦略

投稿者: Reina Matsunami 投稿日:

世界規模の不動産運用会社による予測と分析によると、アメリカの商業用不動産市場は新たな局面を迎えています。

金利の急激な上昇に伴い、負債コストはキャップレート を超える水準に上昇しているため、変動金利で借り入れを行なう資産保有者や、売却・借り換えの機会をうかがう資産保有者は、流動性の問題に直面し、そのような中、不動産価格は下落傾向にあり、銀行、商業用不動産ローン担保証券、不動産投資信託などの伝統的な資金供給者は様子見に転じています。

不動産投資信託は、保有資産の評価額を大幅に下回る価格で取引されるようになり、キャップレートはプライベート市場が織り込む水準よりも著しく高く、資産売却の動きは足元で停滞しているものの、投資資金の流入、バランスシートの調整圧力、資金繰りの問題、さらなる価格下落に備えて売却する動きなどを背景に売却が加速すると予想されます。

不動産をめぐる現在の新しい市場環境下での投資機会は環境の変化に合わせてさらに増加すると予想されています。

資金調達コストの上昇と資産価格の下落は、不動産担保ローンの流通市場を圧迫しており過去10年間において、資産価値に対する借り入れ比率は低下傾向にありましたが、金利の大幅な上昇を受けて、借り手の返済能力は狭まっています。実際、元利金返済カバー率の低下は、不動産担保ローンの貸し手にとって深刻な問題になりつつあります。

米国市場における新規ローンの組成額は2022年5月以降に急減し、前年同期比62%減に落ち込んでいます 。銀行が与信を絞り込むなかで、投資の制約条件が少なく、すべて込みの追い風を受けるデット・ファンドなどの従来とは異なる、新興の貸し手にとっては、極めて魅力的な投資機会が生じています。投資機会の中には、足元で多くの銀行が慎重な姿勢を強めているか、LTV比率の高い案件向けのファイナンスも含まれます。さらに、ラージ・ローンの分野にも組成機会が見受けられます。銀行にとって、大型のローンをシンジケート・ローンや証券化取引の対象にすることは難しく、適切な規模と迅速な実行力を備えた新興の貸し手が優位に立つ可能性があります。

商業用不動産市場では急速な行き詰まりに伴い、魅力的な投資機会が浮上しています。

米国の商業用不動産ローン市場では、2023年から2027年にかけて約2.4兆ドルが満期を迎える見通しであり、そのうち1兆ドル以上の満期が今年と来年に予定され、米国のオフィス所有者は、2018〜20年に借り入れたローン残高の約20%(推計500億ドル超 )に相当する、借り換え時の資金不足に直面しています。

一段と厳格化する規制要件を充足するために、銀行が債務不履行の懸念のある不動産担保ローンの露出削減を模索しており、それに伴うリスク移転の解決策に対する需要が高まりつつあります。新興の貸し手は、金融機関に対してローンの買い取りや、より複雑な解決策を含むさまざまなリスク移転の解決策を提供することによって、大幅に値下がりした案件を投資機会として捉えることが可能となっています。

コアのプライム資産に対するテナント・投資家からの需要は健在で、伝統的な貸し手が様子見に転じるなか、長期的な投資の時間軸において質の高い資産を求め、レバレッジを利用しない不動産の買い手にとっては、足元の環境は特に魅力的であると考えられます。物流や集合住宅を始めとする継続的な需要が見込まれるセクターにおいて、特に魅力的な投資機会が浮上すると予想しています。

供給サイドでは、建設コストと資金調達コストの増加を背景に、不動産開発業者は業務を縮小しており、最近の推計によると、米国の集合住宅の供給の伸びは、2023〜24年の年2.3%から2025年には年1.4%に低下する見通しとのことで供給減が賃料相場を長期的に下支えするとの予想です。

しかし短期的に見ると、テナントは事業の拡大計画を保留しており、実質可処分所得が減少するなか、消費の伸び悩みの影響は物流セクターや小売りセクターにも及んでおり、オフィス・セクターでは、2022年第4四半期のリース契約金額(グローバル・ベース)は前年同期比19%減に落ち込んだものの、通年で見ると上期が好調だったため、前年比9%増となりました7 。

継続的な入居需要が見込まれる分野の1つは、大都市の質の高いオフィスと想定されます。テナントとしての企業は、人材確保における競争優位性の観点から、オフィスのアップグレードに注力していることが挙げられます。また、優秀な従業員の職場復帰を促す目的に加えて、炭素排出量ネットゼロへの取り組みに対する信頼性を高めるために、質の高いオフィスに注目しています。ESG(環境、社会、ガバナンス)格付けが高く立地条件が優れた物件には、より質の低いセカンド・グレードの物件と比べて、賃料で11%、資本価値で20%ものプレミアムが上乗せされる場合もあります 。そのような物件には、テナントと投資家いずれもが積極的にアクセスしようとしています。

また、海外投資家にとっては、特定のターゲット市場における最近の通貨安を好機として捉えることができるかもしれません。なかでも米ドルは、2022年に他の通貨バスケット対比で8%上昇していることから 、米ドル建て資金へのアクセスがある海外投資家にとっては好機と言えるかもしれません。

いかがでしたでしょうか?

今は全くアメリカへの移住後の生活が想像つかないという方でも、これからもうすぐ移住予定という方でも、知っていて損はない情報かと思います。アメリカへの移住は大きな決断です。失敗のないよう、知識もしっかり身につけていきたいですね。 

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